最近は仮想通貨の暴騰が話題になりますが、それに合わせてグラボの品薄が話題になっていますね。
その背景としてはコロナ渦による半導体需要の増加などが理由とされていますが、最近になって品薄に拍車をかけることになったのがマイニング特需の発生です。
最近ではPCパーツショップのグラボの棚が空だとか、RTX3060のハッシュレートを半減させるファームウェアの登場とマイニング需要のせいで混沌としているのがPCパーツ業界の現状です。
そんな中で私は先日AMDのRX6800 XTチップを搭載したグラボを無事に入手することができました。私の使っているグラボの雑なレビュー記事は以下になります。
入手してVRを楽しんだりしていたのですが、「仮想通貨が暴騰してるしマイニングはどうなっているんだろうな~」なんて思い、なんとなくNIcehashのサイトを訪れると収益計算機なるものを発見。
色々見ていると、今のレートだと電気代を差し引きしてもそこそこの利益が出そうなことがわかったので検証も兼ねてマイニングをしてみました。
結論から言うと現状のレートだと利益は十分にでます。ただし、本体の値段や今後の変動や第二次仮想通貨バブル崩壊が予想できない以上は微妙というかリスキーとしか言えません。
あと気を付けるべきは設定次第で収益もマイニングスピードは変わってきますし、それ以外に使っている環境やグラボによっては温度が高温になってしまいPCの寿命を大きく縮める可能性だってあるということです。
では結果を掲載していきます。
目次
超ざっくりRX6800 XTの説明
RX6800 XTのすごく雑な説明をしていきます。
RX6800 XTはAMDの現行世代のハイエンドグラボでTSMC 7nmのテクノロジーノードで生産されています。
AMD的には競合はRTX3080でレイトレーシングを用いないものに関してはベンチマークなどでRTX3080を上回るなど今回は「口だけじゃない」のが現行世代のRadeonです。
また、16GBのGDDR6メモリを搭載しますがこれに関してはRTX30シリーズがほとんどより高速なGDDR6Xメモリを搭載しているためカタログスペック上は優れています。
しかし新技術「Infinity Cache」とかいうキャッシュ技術でそのメモリの差を見事に埋めています。ですが、このキャッシュ技術が今回のマイニングでは曲者になっている可能性が高いみたいです。
私はそっちの方面の技術屋ではないので細かいことはわかりませんがredditを見ている限りはそのキャッシュのせいでハッシュレートが思うように上がらないんじゃないかという見解が多いですね。
最後にTDPは300Wとなっています。
とまあ、関係ありそうなスペックはこんなものですかね。
次は事前情報からも不安要素満載のRX6800 XTで実際にマイニングをしていきます。
実際にマイニング
実際にマイニングをしてみました。
筆者の環境は以下のようになっています。
- OS: Windows 10 Pro
- CPU: Ryzen 9 3900X
- M/B: X570 Taichi (PCIe Gen 4.0対応)
- GPU: RX6800 XT(RD-RX6800XT-E16GB/TP)
製品公式サイト:https://www.kuroutoshikou.com/product/graphics_bord/amd/rd-rx6800xt-e16gb_tp/ - 電源RM850x
マザボもグラボもPCIe Gen4に対応しているのでGen4で接続しています。事前情報だと、Gen4で接続してReSize-BARを利用しているとハッシュレートが向上するとのことなので、ReSize-BARも有効にしています。AMDならAMD Smart Access Memory(SAM)と同義です。
またグラボの設定はデフォルトから一切変更していません。私のグラボのレビューに書いていますが、デュアルBIOSになっており、OCモードとSilentモードがありますが、今回はOCモードで計測しています。
さてWindows環境なのでナイスハッシュマイナーを用いてマイニングをしていきます。登録の仕方とかは一切説明しないので、登録からしないといけない人は各自で調べるなりしてください。英語を読めるならどこも見なくてもすんなり登録して、ナイスハッシュマイナーを使えるようにできると思います。
画像の通りですが、ハッシュレートは59MH/s程度です。これをOCしたりメモリクロックを上げたりすることで多少の改善はみられると思いますが、それでも+10%程度できれば御の字といったところではないでしょうか。
さて、次にこのときのGPUの状況をRadeon Softwareを用いてみてみます。以下のようになりました。
GPUの使用率はほぼ100%、クロックは2413MHz、消費電力は229W、温度は71℃となっています。
つまり59MH/sで230Wの状態であるということなのでデフォルトの状態じゃかなり消費電力が高い割にはハッシュレートは低いということですね。59MH/s自体は悪くない数字ですが、RTX3080と比較すると微妙だなといったところです。
(追記:2021/3/27)
思いのほか見てくれている人が多いみたいなので、真面目にマイニング用の設定をしてみました。以下の記事でマイニング用に設定したうえでどうなったかというのを掲載しています。
ちなみに、私はグラボのデフォルトの状態でチューニングを施していないので、チューニングを施したら消費電力を下がるとは思いますが、色々データを見ている限りそれでも150Wぐらいまでしか下がらないようで、電力効率はRTX3070程度なのかなというところです。
マイニング結果からの考察
結果は今のところは59MH/sで230W、情報収集した限りでは低電圧化を施して消費電力を下げたにしても150W程度になることから、上記にもあるようにチューニングをしてもRTX3070程度の効率であるということがわかります。
ここでRTX3080はどの程度かというと、webにある情報によればチューニングを行った状態で90MH/sで235W程度らしいです。
ここでゲーム性能につい考えてみると、RTX3080はRX6800 XTとほぼ同性能、つまりグラフィックに関する演算能力自体は変わらないはずなんです。
しかし、上記にあるようにデフォルトの状態だと消費電力が同じでもハッシュレートは59MH/sと90MH/sを比較すると1.5倍ほどRTX3080のほうが上です。
GPU | ハッシュレート | 消費電力 |
RX6800XT | 約59MH/s | 150W程度 |
RTX3080 | 約90MH/s | 235W程度 |
チューニングを施せば電力効率では多少はRX6800 XTのほうが良いですが、絶対的な性能は差があるなといったところ。
なぜこのような差が生まれるのかを考えてみるといくつかの点が浮かび上がってきます。
まず一つはInfinity Cacheを採用することによる変わったメモリアクセスの影響。そもそもGPUマイニングはVRAMによる影響を大きく受けるのでこの新しい技術の採用がマイニングにおいてハッシュレートが上がらない原因になっている可能性が高いです。加えて、キャッシュを用いた演算はethashを代表するアルゴリズムで対策が行われていますので、これを今後活かせるようになるかというとこれも怪しいです。
また、これと併せてメモリがGDDR6であること。RTX3080はGDDR6Xという高価で高速なメモリを積んでいるのも差が生まれる理由の一つですね。Infinity Cacheを採用することでメモリの性能さをゲーミングにおいては埋めていたわけですが、今回のマイニング特需においてはどちらともハッシュレートが上がらない理由になってしまっています。
そしてもう一つが、新採用のRDNA2コアに由来すること。もともとRadeonがなぜVegaアーキテクチャの時代にゲームに弱いなどと言われていたかと言えば、あまり使われない演算性能の部分が高かったためです。
RDNA系統のコアはそういった演算機能を削ってよりゲーミングに特化したグラボを作るという方向になったため、コアの性能的な面も理由の一つであると考えられます。
この上記の理由を裏付けるようにVega世代で最高の性能を誇ったRadeon VIIは2世代前のグラボであるにも関わらず、現行最高のハッシュレートと電力効率を誇っています。具体的にはRTX3080と同じ消費電力で100MH/sを達成できる可能性があるぐらいには高性能です。さらにメモリにGDDR6Xよりも高速で高価なHBM2を採用しているのもハッシュレートが高い理由の一つですね。
GPU | ハッシュレート | 消費電力 |
RX6800XT | 約59MH/s | 150W程度 |
RTX3080 | 約90MH/s | 235W程度 |
Radeon VII | 約100MH/s | 250W程度 |
なのでRX6800 XTは設計的にもハッシュレートが上がりにくいものの、ゲーミングにおいてはRTX3080と肩を並べるくらいに性能は良いので、ある意味マイナー泣かせなグラボです。
ただ上でも触れていますが、それでもRTX3070程度の性能があるのでマイニングのためにRTX3070が買い漁られている現状では同様に入手困難なのが現状です。ただRTX3070よりは定価を考えるとコスパは悪いですね。
この状況はこの記事を執筆している段階でハッシュレートがこの程度であるというだけで、いつぞのように数が出回るよいうになってマイニング用BIOSが登場したり、AMDからBlock Chain Editionみたいなものが登場して突然ハッシュレートが向上しないとも限らないので、今度の動向はよく観察する必要があります。
まとめ
現状はRX6800 XTのハッシュレートと効率はRTX3070程度で、マイニングにおいてのコスパを考えると微妙です。
RTX3070が狩りつくされている現状を見る限り6800XTでもなんら問題なくマイニングができてしまうのも事実です。ただかつてのVegaアーキテクチャのほうがマイニングにおいての効率は良かったのは間違いありませんね。
ただし、ゲーミングの性能を見る限り性能的にはRTX3080にあk多を並べうる力自体は持っているので、今後の動きによっては大幅にハッシュレートが向上する可能性を秘めているのも事実です。
新しくマイニング用のGPUを考えている方は将来的にどうなるかや、初期費用のことを考えてマイニング機材を選んだ方がいいですね。