RTX3060はNVIDIAによればマイニング制限をかけられています。ですが、3月中旬ごろに発見されたβ版ドライバを用いることでマイニング制限を解除できることが判明し、ゲーマー達からは失望が、マイナーたちからは歓喜の声が上がりました。
最も、ゲーマー達からも価格が高いRTX2060S以下の残念製品という肩書をもらっているので、高いし、性能悪いし、マイニング制限までかかっている。残念な3点が揃っていて誰も得していませんが…
というわけで、今回はRTX3060でマイニング制限を解除してマイニングをしてみたお話です。ついでにOC設定なども行って最適化を行ってみます。
目次
RTX3060のマイニングリミッターとは
そもそもマイニングリミッター(英語直訳)とはなんなのでしょうか。なぜこのようなことになっているのか、何が対象になるのか、どのようにことが運んで行ったのかなど、知らない人のために簡単に説明をしておきます。
もしかしたら、何年後かに「なんでこれだけ制限がかかっているのか?」となったりもするかもしれませんしね。せっかくなのでここら辺も書き残しておきます。
第二次マイニングブームの到来
このマイニング制限をかけられるきっかけとなったのは、ご存じの方が多いかと思いますが、第二次マイニングブームの到来です。
このマイニングブームのせいで、中古を含め様々なグラボが世界中で買い漁られグラボの値段が暴騰したことに由来しています。例えば私の手持ちでいうならRX570 8GBは1万そこらで買えたのに、今では中古価格ですら3万5千円の世界です。
ここでNVIDIAはじゃあマイニングにリミッターをかければ、品薄も解消されるのでは?ということになったようで、ゲーマーのためのグラボとして、マイニングリミッターをかけたグラボが世に出回ることになったわけですね。
これが記念すべき初めてのマイニング制限付きグラボRTX3060の誕生秘話というわけです。
MSRP329$が6万円越えの衝撃
そして2060S以下の性能
しかし、製品が発売されたこの年は深刻な半導体不足によってそもそも半導体の価格が上昇しています。そのためMSRPが329$であるにも関わらず、最安値で6万円程度というバカげた値段で販売されることになりました。
ちなみに肝心の性能はというと、全世代よりいうほど上がっておらず、RTX 2060 Superよりも基本的には下という非常に残念な結果になりました。本当になんでこうなってしまったんでしょうね、というぐらい値段に対して性能が釣り合っていないです。
しかもこれでいてマイニングリミッターがかかっているので、それはもう発売日に完売とならず、結構売れ残っていました。そしてしばらくお店にはRTX3060とローエンドグラボだけが残り、他のグラボは軒並み全滅。こんな日が続いたのです。
発売数週間で突如訪れたXデー
しかし、3月中旬の某日、真偽のほどは不明であったものの、特別な改造なしでRTX3060のリミッターを解除(回避)することができるというニュースが登場。
この報道が出た日から一気にRTX3060が個人や業者によって買い占められます。その次の日にはお店の安いRTX3060の在庫が狩りつくされてたレベルだったみたいですね。
さらにその翌日に検証を行ってみたという記事が出て、特別な改造なしでのリミッター解除が本当であったことが判明します。この記事が出た日にはすべてのRTX3060が店頭から姿を消しました。
そしてRTX3060もマイニングに駆り出されるようになってしまったわけですね。
このようにして、店頭でRTX3060も入手困難になり、値段も発売日よりも上がり自作PC業界にさらなる地獄をもたらしたという流れなわけです。
記事執筆時点で、RTX3060の価格はほぼ7万前後で6万円台のはほとんどないです。発売日当日に5万円台だったZOTAC RTX3060は現在で7万程度の値段になってしまっています。しかも、これが店頭の新品の価格なのがゲーマーにとって地獄のような時代です。
マイニングリミッターは何を制限する?
さて、ことの流れを残しておいたところで、マイニングリミッターが何をしているのかをある程度把握しておきます。
マイニングと言ってもアルゴリズムによって様々で、実はすべてのマイニングアルゴリズムにおいて制限がかかるわけではないです。
現在GPUマイニングの主流になっているアルゴリズムの「Ethash」が制限の対象となっていて、判定の方法としては大量のメモリアクセスや、GPU使用率を判断基準にしているとの噂です。
記事執筆時点でも、解析が完了しているわけでもないので、このリミッターが何をしているのかは具体的には不明で、結果として「Ethash」のみが制限を受けているということです。
なので例えば「Octopus」というアルゴリズムでは制限がかかっていないのでこれを目当てにする人もいるみたいですね。
なのでこのマイニングリミッターは、現在使用されている中でいうなら、特定のアルゴリズムにしか効果のない中途半端なリミッターだったというわけです。
そのために、マイニング制限を解除する方法が見つかってしまったんでしょうね。
リミッター解除の方法
リミッターの解除方法は結構簡単です。
開発者用のβ版ドライバを使います。このβ版のドライバのバージョンは470.05というものを用いる必要があります。
今使っているドライバは一度アンインストールしてから、470.05のドライバをインストールするだけで、マイニング制限を解除することが可能になります。
いくつか注意点や制限事項があるので、この後も必ず読んでください。
制限や注意点
以下の点に注意してください。条件として以下があります。
- PCIE x8以上でリンクすること
- Windowsのみで可能である
- 複数のGPUを搭載する場合、ダミープラグまたはモニターへの接続が必須
これがハードウェアに求められる条件です。PCIE x8以上でリンクさせなければいけないのが少し辛いところで、AMDのAthlonグレードのAPUだとこの方法は使えません。Ryzenグレードならx8でのリンクが可能なので大丈夫です。
Windowsのドライバを使うので当然ながらLinuxでは使えません。
また、複数のGPUを積む場合はモニターにつながっていると判定される必要があるためモニターに繋ぐか、ダミープラグが必須な点にも注意してください。
次に注意点ですが、まずβ版ドライバ470.05ですが現在はNVIDIA公式サイトから削除されています。本来はデベロッパー登録をしてダウンロードすることが可能だったのですが、この情報が出てから検証されるまでの間に削除されています。
なので、現在は正規の方法でのβ版ドライバの入手は不可能です。調べれば出てきますが、オンラインストレージなどに上がっているので、どうしてもという方は、ウイルス混入などのリスクをご自身で判断してください。
私は情報が出てから、すぐにデベロッパー登録を行ってダウンロードできたものを使っています。
気を付けるべきことはこれぐらいですね。
次は実際にやってみます。
今回の環境
グラボ2枚積み、Ryzen 3 2200G (APUでx8リンクが可能)で確認します。細かい機材は以下です。
項目 | 名前 |
OS | Windows 10 Pro 2004 |
Driver | Beta version 470.05 |
CPU | Ryzen 3 2200G |
M/B | B450I Gaming Plus AC |
RAM | DDR4-3200 8*2GB |
GPU1 | Manli RTX 3060(M-NRTX3060 / 6RFHPPP-M2500) |
GPU2 | ASRock RX570 Phantom Gaming M1 8GB(公式サイト) |
SSD | ADATA 120GB |
PSU | Thermaltake TR2 Bronze 450W |
このような構成になっています。家でのあまり部品をかき集めて作成しました。
ちなみにITXサイズのマザーボードを今回の検証で使用していますが、なんの意味もなく、M.2を変換して強引にグラボを2枚搭載しています。
RAIJINTEKのMETIS PLUSというケースを今回は使っているのですが、これに強引にグラボを2枚積みしてみたという記事を書いているので気になる方はどうぞ。
グラボは2枚積みなのでHDMIのダミープラグを使用します。これをしないとリミッター解除はできないので気を付けたいところ。
グラボはRTX 3060とRX570 8GBの混合構成で確認をしていきます。RTX3060はManliのものを使用します。
大阪の某ショップにて入手しましたが、代理店も不明でそもそも正規の代理店は日本に存在しない説が有力な怪しい会社です。かつて、Manliはマスターシードが扱っていたのですが、倒産してからManliを扱う問屋はないはずなんです。なぜ国内のショップで手に入ったのかが謎です。まあ怪しいRTX3060で解除できれば大体どんなやつでもリミッター解除できると思います。
ちなみにリグで使えたらいいなぁなんて思って、実はx4接続じゃダメかどうかAthlonで検証を行っています。CPU変えただけなんですが、以下のような構成でも検証しています。
項目 | 名前 |
OS | Windows 10 Pro 2004 |
Driver | Beta version 470.05 |
CPU | Athlon 3000G |
M/B | B450I Gaming Plus AC |
RAM | DDR4-3200 8*2GB |
GPU1 | Manli RTX 3060(M-NRTX3060 / 6RFHPPP-M2500) |
GPU2 | ASRock RX570 Phantom Gaming M1 8GB |
SSD | ADATA 120GB |
PSU | Thermaltake TR2 Bronze 450W |
ですが、こちらの構成ではマイニング制限を解除できたなかったのでこの後は特に出番はないです。
なので、この後の実際にマイニングをしてみる実験では最初に掲載している「Ryzen 3 2200G」を用いたもので実証しています。
また今回検証で使うアルゴリズムは当然ながら、本来は制限がかかっている「Ethash」で検証します。また、ツールはNicehashを使って、RTX3060はExcavatorでハシュレートを検証します。
OC設定
RTX3060はメモリバスが192bitと少しだけ小さいため省電力向けにチューンを行う必要があります。
また、OC設定にはMSI Afterburnerを用います。
私はAfterburnerで以下のように設定しました。
上の画像のように設定していますが、とりあえず叩き台としてはこんな感じといったところです。
メモリはクロックが伸ばせる個体だと+1450MHzまで行けたりするみたいです。ただ、私の個体だと+1250MHzでも少し怪しかったので、落として+1150MHzにしています。SamsungメモリなのにOCの方はハズレ個体だったみたいですね。悲しい。
また、PLは70%、Core Clockは-500MHzにしていますが、おそらくネットの情報を見る限りもうちょっと削れます。ただ、今回は安定して動いてほしいのと、クロックが低くてハッシュレートが下がるということは避けたいのでこれぐらいにしています。
なので、この画像の値から詰めていけば消費電力をもう少しだけ下げることも可能かと思います。また、もっとメモリOCをしてハッシュレートを上げることも可能だと思います。
実際にマイニングをしてみた
では実際にマイニングをしてみます。
今回は環境でも書いているNicehashを通じてExcavatorを用います。その結果、以下の画像のようになりました。
47.5MH/s程度がずっと出続けています。消費電力は120W。もうちょっと下げれると思いますが、悪くない数字です。そしてリミッター解除がしっかりできています。ちなみにうまくいっていないと、約半分程度の22MH/sとからしいです。私は試していないのでわかりかねますが。
ダミープラグをさして描画させている扱いになるので、リモートデスクトップなどでグラボのリソースを使用すると、44MH/sとかに下がりますが、なんら問題はありません。リモートデスクトップを使って思うようにハッシュレートが出ないという方は、リソースを使わないように、しばらく放置してみるとハッシュレートが上がってくるはずです。
これだけハッシュレートが出るようになったのであれば、店頭からRTX3060が消えるのも納得です。
ちなみに、私はRTX3060を買うのは遅かったですが、運よく58000円程度で入手できたため、ハッシュレートあたりのコスパは良かったですが、現在の価格だと微妙だなといったところです。
補足:現在のRTX3060の在庫や価格などの現況
RTX3060は他のRTX30シリーズと同じように見かけたらラッキー程度のアイテムになって店頭からも姿を消しています。
一時期はネットにも在庫があったのに、情報が出るや否やすぐにネットでも入手不可になりましたね。
また発売当初の値段でも十分高かったにも関わらず、さらに値段が上がってコスパの欠片もない残念な状態になっています。60グレードに7万ってどうなのよって感じです。
今のグラボの価格はハッシュレートに応じた値付けになっている状態なので、多少は制限があれどマイニングができるようになってしまったようでは値段が上がってしまうわけですね。本当に残念です。
まとめ
RTX3060のマイニングリミッター解除の方法と検証についての記事したがいかがでしょうか。
実際に特別なことをしなくても、比較的簡単な方法で、制限が解除できるということが実証できました。
ハッシュレートも47.5MH/s程度とそこそこよく、発売当初の価格ならよかったのですが、今の7万前後の価格ではあまりお得感もないですね。
消費電力との兼ね合いでいくと、RX6800 XTが110Wで63MH/sを実現できることを考えると微妙かもしれませんが、本体の値段を考えると悪くないですね。
ソフトウェアで制限することに意味がない、時間稼ぎにしかならないというのをNVIDIAが直接やってみせたわけで、これは今後の新しいGPUの展開の大きな影響を与えたことは間違いないと思います。
今後のNVIDIAのマイニング制限の動向には要注目ですね。
以上です。お読みいただきありがとうございました。
コメント失礼致します。マザボの見た目がPCIE×16のスロットで、スペックにもPCIE×16が2個と書いてあるのに、3060を二つさしたら、片方は×16モードで、片方が×4モードでハッシュレートうまく出ませんでした。これを解決するためにおすすめのマザボはありますか?また必ずPCIEスロットは×8以上である必要はありますか?
コメントありがとうございます。
おすすめのマザボに関しては使ってるCPUによるのでお答えできませんが、基本的にはそのソケットの一番いいグレードのチップセット搭載のマザボを使うことになると思います。
PCIEx16を分割して使う感じになるのですが、それができるのが上位チップセットのみです。これができない下位のチップだとスロットはx16形状で、リンクスピードがx4というのは多いので、富士様の症状はありがちなものかと思います。
また、当然ながらRTX3060がLHRでないという前提にはなりますが、x8以上で接続していることが必須条件になりますので、x4やx1の接続だと制限は解除できません。