最近、日本語配列の自作キーボードを作った話を書きました。
その際、組み立てるのが楽しかったのと、コンパクトさ、使えるキーキャップなど、魅力的だと感じることが多かったです。
ですが、そこで気になったことが一つあり、それは「日本語のキーキャップを完全に使えるのがなくね?」という感想でした。
私が自作キーボードをしたきっかけは、「キーボードの調子が悪いし、色々いじるのが好きだから自作キーボードをやってみよう」という感じでした。
キーキャップを探している中で、レビューもしているCORSAIRのPBT DOUBLE-SHOT PROという製品が非常に気に入りました。私は緑色が個人的にすごく好きで、そんな色のキーキャップだと日本語配列のものは最近まではなかったのですが、去年の今頃に発売されました。
どうしてもそのキーキャップで組みたいという少し珍しい事情だったのですが、基本的に日本語配列のキーボードは一番下側の配列がキーボードによって違い、これといった並びの決まりがありません。そのため、日本語配列のキーボードというのは少ないのが現状です。あっても、私の使いたいキーキャップは使えません。
そこで、ないなら作ってしまえばいいじゃないということで実際に設計して発注までやってみました。海外での発注体験がないので少し不安でした。実際に発注してみることでその不安を払拭するという狙いがあります。また、同じような不安を持つ方の参考になる何かを残せればよいなと。
基板の設計の細かいことは話しません。ここで紹介するのは流れを残しておきます。
主に発注先であるElecrowとトラブルや親切な対応等、様々なやり取りが色々あったのでその点を残しておこうと思います。Elecrowへの発注と対応のレビューに近い感じです。
目次
PCBを設計
自作キーボードを作るにあたってはメインとなる基板を用意しなければなりません。配列や大きさを決定する最も重要な部分です。
この部分を1から作ります。
が、細かく説明する必要性もないと思うので、説明はしません。他のサイトの方が細かく説明しているでしょう。
ライブラリを入れて好きなように設計していくだけです。AVRマイコン(ATMEGA32U4みたいなキーボードを行うチップ)を直接組み込む場合は多少知識がいると思いますが、ProMicroのようなデバイスを後から組み込むようにするのであれば非常に簡単だと思います。
トッププレートを設計
これは人によって不必要な人もいるかと思いますが、多くの人が必要としているかと思います。
これは何かしらのCADだったり、Blenderのようなモデリングツールで作成ができます。加えてKiCadでも設計することができます。
お好きな方法を選んだらよいと思いますが、私は安価に制作したかったのと、具体的な作り方がインターネット上では見つけられなかったので、試しにKiCadを用いてPCBとして作製してみることにしました。
設計の際は、自分でライブラリを作ってからキーの位置に合わして穴を配置することで作成しました。
PCBとして作製する場合、厚みを間違えないようにしないといけませんが、これは発注時に指定するものなので、後で説明します。
ガバーファイルを出力
電気系に全く興味のない人だと、まずはガバーファイルって何?ってところから始まると思うのですが、端的に言えばPCBを製造するために必要なデータのことです。
このガバーファイルというのは、ある程度規格化されています。そのため、PCB設計ソフトで簡単に出力が可能です。
ただし、次に説明するElecrowへの発注に限らず、発注業者によってファイル名のフォーマットが決まっていたりするので、それに従わないといけません。細かいことは他のサイトを参照してもらえればと思います。標準設定で問題なかったので出力ボタンポチポチするだけです。
また、ドリルファイルは発注先によって設定を変更する必要があります。この部分は少しだけ注意が必要です。と言っても、両面のデータをまとめて出力する設定にするだけです。
Elecrowに発注
Elecrtowに発注をします。とりあえずアカウントを作成します。以下のリンクから作成すると、5$相当のポイントがもらえます。
Elecrowリンク
https://www.elecrow.com/referral-program/NDc5ODFqMnQ/
2層の基板について説明しておきます。発注自体は上記で出力したバーファイルを利用しますが、ファイル名を変更する必要があります。
Elecrowの発注ページの表記を見るとこのような表記があります。
TOP LAYER: | pcbname.GTL | BOTTOM LAYER: | pcbname.GBL |
---|---|---|---|
SOLDER STOP MASK TOP: | pcbname.GTS | SOLDER STOP MASK BOTTOM: | pcbname.GBS |
SILK TOP: | pcbname.GTO | SILK BOTTOM: | pcbname.GBO |
NC DRILL: | pcbname.TXT | MECHANICAL LAYER: | pcbname.GML |
このフォーマットに合わせてリネームする必要があります。基本的には出力したがバーファイルの小文字を大文字にするだけで良いのですが、"GML"だけ"gm1"に、"drl"を"TXT"という拡張子の物を変更する必要があります。私の場合は、リネームする最終的にこんな感じになっています。また、Elecrowで4層基板を発注する場合はさらにファイルが必要になりますが、ここでは紹介しません。
このようにファイルを作成したら、これをzipにまとめて発注ページにてアップロードします。
後はご自身で発注したいスペックになるように、発注ページでパラメータを選択します。色や加工によっては値段がプラスでかかることがあるので、見積もり金額を確認しながらにしましょう。
全て設定してら、後は発送国を選んでカートに追加します。
複数発注する場合は同様の工程を繰り返します。全てカートに入れたら、お好きな方法で決済したら発注完了です。
設計の怪しい部分を教えてくれた
発注すると、よくある自動送信メールがやってくるので、後は到着を待つだけか、と思っていたのですが、Elecrowのサービスからメールが送られてきます。
Sorry to bother you, do these holes have copper holes with file#yourfile?
The holes drilled through the wires. Please check if there is any problem. Thank you.
Elecrowのサービスより
端的に言うとドリルで穴をあけるホールに配線あるけど大丈夫か?という連絡でした。チェックしたつもりなんだけどなぁなんて思っていたのすが、写真付きのメールで送ってきてもらっていたので確認してみます。
がっつり設計不良でした。1枚目は私の削除忘れだったので、問題なったのですが、2枚目はがっつり配線が切れてしまうのでダメです。最後の最後にホールを追加したのでうっかりしていました。
あとはトッププレートのファイルにも問題があったようで、正しいフォーマットになってないから正しいフォーマットにしてくれという連絡でした。
こちらは心あたりがあったので一度設計し直してファイルを再作成しました。
今一度チェックして、Elecrowに作り直したということと、しっかりチェックしてくれてありがとうというメールを送りました。
すると数時間後に返信があり、問題はなくなったから製造準備するねということでこちらのメールはここで終わりです。
国内のメーカーだとこういうエラーをチェックしてくれてたりするので、安心感があったりするのですが、まさか格安の海外メーカーのElecrowでも同じようにチェックしてくれているとは思いませんでした。
エラーを見つけてくれて本当に感謝ですね。今後も利用させていただきたいです。
送り先について
私はPaypalで決済してその情報を基に発送を行うのですが、Paypalに登録した当初は日本で使用することしか考えていなかったため、名前が日本語になっていたのを忘れていました。住所は英語だったので問題なかったのですが、それについて連絡がありました。また、電話番号も登録していなったようで、それも教えて欲しいということも書いてありました。
Elecrowはサービスの担当者あたり一つのメールアドレスを持っているようですが、先ほどのエラーがあったということを連絡くれたのとは別の方がメールを送ってきました。
Dear (日本語の名前),
Thanks for placing an order with Elecrow.
Elecrowのサービスより
Could you please provide your English name and phone number to us? Thank you.
送り先も適当に印刷して貼り付けているわけではないみたいです。こんな手間ばかりかけて申し訳ないな、と思いながら必要な情報を返信しておきました。
余談ですが、中に入っていた紙を見る限り、私の名前の一文字だけ正しく印刷できていなかったようです。鉛筆で正しく印刷できていなかったのに線が引かれていました。
製品に不良があった
結果から先に書くと、これは私ではなく、Elecrow側の不備だったようで、作ってもらった基盤に問題がありました。パターン不良ではなく、ドリル加工に問題がありました。
ひとまず基盤が家に届いたので、基盤をチェックしていました。すると、あれ?こんな形だったっけ?という場所があったので、ガバーファイルを確認してみたところ、そのような形にはなっていません。これがそのガバーファイルの写真です。Elecerowにメールで送ったものと同じ画像です。
これが送られてきた基板だと以下のような感じでした。
正直、最初のガバーファイルの件もあるので、こっちが何か悪かったかも?と思い適当な英語で確認してみます。サポートから送っても良かったのですが、今回、ガバーファイルの件でお世話になった担当の方にメールを直接送りました。
Dear (担当者)
Thank you for your products. I receive PCBs.
I checked the PCB and I found the error.
The photos are a gerber files selected the drilling file and the PCB. I think you can drill such shapes in the gerber files I send. However, The products don't have such shape.
Is this problem something bad with the gerber files(drilling files)? Or do something wrong from your processing?
If you had something wrong on production, I want you to send the good one again. All PCBs(5pcs) of (ガバーファイル名) have this problem.
Best regards.
(名前)
THUNが送ったメール
私は英語が全く得意ではないので、とりあえずこんな文面で言いたいことぐらいは伝わるだろう、という気持ちで送ってみます。細かい文法なんて二の次です。この手の文だとGoogle翻訳等を使うと文の因果関係がおかしくなることがあるので、自分で書いたほうが良いと考えています。私が書いた文面が正しく伝わっているかは知りません。
数時間後返信が返ってきます。
Dear (名前),
Sorry for the inconvenience brought to you.
Should be the board in the production of slot, there is a broken knife situation.
We can arrange a redo for you. Is that ok?
Elecrowの担当者からの返信
とりあえず言いたいことは伝わったみたいです。
私の語学力的な問題かわかりませんが、いまいち原因がはっきりしていません。ある程度英語ができる友人にも読んでもらいましたが、いまいちよくわからんなとのこと(笑)。
おそらく、製造する段階のデータで何か変なことがあってナイフの段階(ドリルを横方向に動かす段階がある?)の設定がおかしかったということでしょう。しかし、本当によくわかりませんね。
とりあえず最後の一文で、Elecrowが悪かったということがなんとなくわかります。作り直すけどそれでいいかい?って書いてますしね。
というわけで作り直しで大丈夫、もし発送したら追跡番号だけ送ってと返信して、他にオーダーはないかとか、そんなやりとりをして終了。
で、最後やり取りから6日後に作り直したPCBの発送連絡がきました。Elecrowは発送時にPCBの写真を添付してくれるのですが、それが最初におかしかったときのそれと一緒だったので、少し不安でした。実物があっていれば良いので、気長に待ちます。
でそれから2日後(問い合わせてから8日後)、作り直してもらったPCBが届きました。こちらはご覧の通り問題ありません。
これを担当者に問題なかったよ、ありがとう。とだけ送って今回の注文は全部が終わりました。
私はミスするのは仕方ないと思っているので、ミスした後の対応が大切だと考えています。なので、今回のように最初から最後まで非常によく対応していただいたElecrowの評価は個人的に非常に高評価です。今後も是非使いたいですね。
まとめ
始めての海外発注でElecrowを使いました。
色々私の不備があった中で、非常によく対応していただきました。とても感謝しています。
逆にPCBにはElecrow側の不備がありましたが、こちらも作り直していただき、よく対応していただきました。
ここまで、やって評価が悪いということはないですね。個人的には非常に高評価です。今後も使わせていただこうと思います。
以上です。お読みいただきありがとうございました。