私が初めて自作キーボードを作ったときに疑問に思ったのが、「スイッチの部品の真下に空いている二つの穴は何だろう?」ということです。ニッチな話題のせいなのと、おそらく人気のないコンテンツのためか調べても簡単に出てきませんでした。その答えがタイトルの通りLED実装用の端子というわけです。いわゆるバックライトLEDで、キーに印字された文字を光らせてくれるやつですね。
割とよく見るタイプのライティングだと思うのですが、なぜか自作キーボード界隈では人気が無いように思います。理由としてはRGBの制御ができないからだと個人的には考えています。この単色タイプは特定の色のLEDを実装して、PWM制御で明るさを制御するだけです。個人的はMacbookみたいには黒いキーに白色の光の構成なんかは憧れたりするので結構好きですが、界隈ではそうではないようです。
アンダーグローではないLEDで、キー単位でをRGB制御ができるものといえば、SK6812miniですね。使える基板では使い勝手は良いと思うのですが、基板上で大きな面積が必要なのと、マルチレイアウトなキーボードには向きませんし、何よりコストが高いです。そのため、完成品に使われていることは稀で、多くのPCB単位で販売しているキーボードでは今回紹介する単色LEDのバックライトしか実装できないことが多いです。
始めて部品を購入して自作キーボードを作ったときは気にしませんでしたが、自分でキーボードを設計するとなると、このような単色LEDライトについて書いてくれているところが無く、いまいちどのような実装をしたら良いのかや、今回は簡単にまとめてみようと思った次第です。
目次
どんなLEDをどう実装する?
基板を設計するとなると、どんなフットプリントを実装するのかということです。自作キーボードなので、SK6812miniのようなタイプのRGBのLEDから今回紹介するような単色LEDまで、その気になればどれも実装できます。
冒頭でも書いた通り、マルチレイアウトの基板にはRGBライトは向かないので、私は単色のLEDを実装できるようにしようと考えました。ただ単に私の設計しているキーボードがマルチレイアウト対応のものだったという話でそれほど深い意味はありません。
そこで問題になるのが単色LEDの実装方法。RGBのものを設計する場合は例や説明してくれているサイトもあったきがしますが、単色LEDについて触れているところは見かけません。
そもそもメーカー製のキーボードだとどうなっているのだろうと、分解してみると、単色のLEDチップがスイッチから見えるように裏を向けて基板上に実装されています。
メーカー側で量産することを考えるとこの形の実装が一番楽で良いでしょう。しかし、手はんだでやることを考慮する自作キーボードだとそうもいきません。いちいちSMDの部品を用意してというのでもできなくもないですが、面倒なのでもう少し簡単に実装したいところ。
そうなると、「Lチカ」なんかで使われるような砲弾型のLEDライトが使える形状となってくるわけですね。
実際に自作キーボード基板用として販売されているキーボードだと穴が二つのパターンのことが多く、これが必要なわけですね。私が設計するものもこのような例に倣って同じように設計することにしました。
設計の際はQMKのドキュメントを参照すると例が出てきます。深く考えなくてもサンプル通りで十分使えるでしょう。
GitHub
https://github.com/qmk/qmk_firmware/blob/master/docs/feature_backlight.md
回路を見た感じトランジスタかMOSFETを使って電流を制限することで実装するようです。つまり、実装するLEDの数と流せる電流については考慮して部品を選ばなければならないようです。実際のところ、安価に実装できる2N7002で60%キーボードの規模を賄うのは難しいと思うのでもう少し電流を流せるトランジスタかFETを使います。
さて、トランジスタの実装も理解しました。砲弾型LEDを使うことまではわかりましたが、具体的にはどんな砲弾型LEDをどう実装するのでしょうか。
どの程度のLEDを選ぶのが良いのか
何も考えずに部品を選べるのかというとそうでもないことが回路を設計しているとわかってきます。まずは形や実装形式でなく、実装するLED特性などを考えてみます。
これは回路構成にもよりますが、余程特殊な回路でない限り2パターン考えられます。これはLEDに接続する電源の電圧によって変わります。基本的にMCUは5Vか3.3Vで駆動しているので、どちらかを電源にするかで選ぶべきLEDのスペックが変わることがわかります。結果から言うと回路によって深く考える必要は正直無いと思いますし、電源は5Vに繋いでおくのが良いと思います(損失の関係で)。
LEDの選び方は至ってシンプルで、電圧特性を見て順電圧特性に合ったものを選ぶだけです。似た言葉だと逆方向電圧というのがありますが、これは基本的には無視して良いです。LEDを逆向きに実装したときに壊れる電圧ぐらいに思ってください。
実装できる候補は小型なものやチップのもの(具体的なサイズは後述)に限られるため、ある程度小型なものから調べてみます。
すると、最大電圧が表記されていないものが多くどれを選べばよいかわからない状態であることが判明します。例えば順方向電圧Vfが2-2.2Vのものや、3-3.2Vと表記されるのみで、5Vの電源を駆動に使って大丈夫なのか不明なものが多いです。ここで経験上の話をしておくと、大体は5Vでも動くものが大半です。もちろん全部が全部というわけではありませんが…
なので順方向電圧が電源電圧を下回らなければ大丈夫で、仮に5Vでなく3.3Vを電源に繋いだとしても、白や緑あたりの一部で3.6Vぐらい必要な場合以外は発光できると思います。こういう事情で、基本的には5Vに繋いでおくのが無難だと思います。
なので、LEDは順方向電圧を上回る物であれば大体OK、回路的にはとりあえず5Vのラインに繋いでおくのが安牌です。
どのサイズをどう実装するか
LEDの特性などについては上で述べた通りなので、サイズやどのように取り付けるかを確認します。
まず、一度出てきた写真でサイズを確認します。
一番上が2x3x4mmのダイオード、真ん中のものが、台座?部分が2.4x3.3x1.55mmの丸い部分が直径が1.8mmとなっていて、一番上の物より小型です。一番下のは4x5x6mm外接サイズの砲弾型LEDとなっています。一番下の物は見るからに合わないので検証に使うのを辞めました。これらはAliexpress等で買いやすいものを選びました。
ちなみに、海外フォーラムによると、純CherryMXの場合は直径3mmの砲弾型LEDライトでも行けるそうですが、下の部分にでっぱりがあるとだめらしく、LEDの入手性がEbayから手に入れるという微妙な感じだったので辞めました。また、CherryMXにはそれぽく穴が大きく加工されているのですが、互換スイッチにはそのような加工があるにはあるのですが、MXより小さく見えたのが見送った理由です(本当にそうかはわかりません)。
話を戻しまして、上二つを実装していくわけですが、実装方法としてはスイッチの上に実装してしまうか、スイッチの下に入れてしまうかですね。まず、スイッチの上に2x3x4mmを実装したものを示します。
これは写真の通りですが、かなりスイッチに対してギリギリの設置感になります。実際にこれはうまく使うことができますが、手抜きで実装すると傾いたりしてしまい、キーキャップにヒットする場合があるので、あまりおすすめできません。割と気を使って実装しないといけないのがしんどいです。また次の項で説明するキーキャップとの干渉の可能性があるので気を付けた方が良いです。
次に1.8mmのものをスイッチの上から実装してみたものを示します。
こちらはスイッチに対しても余裕があることがわかると思います。適当に実装しても大丈夫だったので、スイッチの上から実装するなら間違いなくこっちの方が良いです。
最後にスイッチの下に実装してみます。1.8mm物は検証していませんが、スイッチの上からでもうまくいくのと、2x3x4mmものよりも小型なので、大きいものが上手くいけば間違いなく上手くいくはずです。
こちらは上手くいきます。2x3x4mmをどうしても実装する場合はこのように実装したほうが良いですね。ただし、取り付けるときに余りに斜めになっているとスイッチにあたって基板にスイッチをはめられなくなるので、真っすぐ実装しないといけません。しかし、基板上のパターンを正しく実装できているのであれば、比較的簡単に実装できるので悪くは無いと思います。
なので結論としては、スイッチ下に実装するなら、どちらのサイズでも大丈夫、スイッチ上に設置するなら1.8mmのものがおすすめということになります。ちなみに、これ以外のサイズだと入手性が悪かったりコストが悪くなったりするという背景があるので、基本的にはどちらかのサイズにするのがコスト的に無難に落ち着くと思います。
キーキャップとの相性
おすすめのサイズや実装方法について紹介しましたが、気を付けなければならない点があり、それがキーキャップとの干渉です。
まずキャップの裏側の写真を示します。
少し見にくいですが、上側に文字が印字されている部分があります。下側には樹脂形成時のサポートがあります。十字の上の部分だけが切り取られているような状態になっていますね。じつはこのサポートが悪さをします。
斜めからみると、割と前にLEDが出ているのがわかるでしょうか。実はこのでっぱりが、キーキャップのサポートと干渉することがあります。これは割と丁寧に実装したつもりでも起きるので、このサイズものを実装するときは、キーキャップの向きやサポートにも気を付けたいところです。
私の場合はいわゆる南側にLEDを配置した構成になっているわけですが、キーキャップが想定している向きは印字の位置からしても逆向きです。実際、逆向きにキーキャップを付けると鑑賞しなくなるので、LEDのサイズとともに、スイッチの実装の向きにも気を付けたいところです。
まとめ
自作キーボードにおける単色LEDの実装やその選び方について紹介しました。簡単にまとめると、2x3x4mmのものは実装方法をよく考えれば使え、1.8mmものは割と気にしないでも使えるので1.8mm物を使うのがおすすめです。しかし、キーキャップとの干渉が起こる場合もあるので、スイッチとの向きについては良く考える必要があります。コスト的には2x3x4mmのものが用意しやすいですが、100個で数百円の差なので、そこまで気にする必要はないかもしれません。
個人的にはバックライトLEDは扱いやすくて好きなので、使うキーボードが増えたら嬉しいな~なんて思います。